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映画『名探偵コナン 迷宮の十字路』を振り返る

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※以前自分のブログに書いた記事を移したものです。

名探偵コナン 迷宮の十字路』は劇場版としては7作目で2003年に公開。平次と和葉にスポットが当たる映画で冒頭の解説シーンにも2人が登場しました。

『世紀末の魔術師』以来の登場でその時は前半にしか登場しなかった2人ですが、本作では平次の初恋の人を探すことが目的の1つになっているのもあり終始シナリオに絡み、コナンや蘭にも見せ場のある映画です。

あらすじ

コナンは小五郎、蘭、園子とともに京都の山能寺を訪れます。

山能寺には12年に1度開帳される秘仏(期間を限定して公開する仏像のことです)があるのですが、8年前に盗まれ犯人から居場所を示した暗号らしき手紙が届いてました。

それを小五郎に解読してほしいと寺の僧侶、竜円が依頼したのが訪れた理由です。

コナンは仏像や美術品を狙う盗賊団『源氏蛍』が、仏像を盗んだ犯人だと目星をつけ独自に調査を始めますが、その源氏蛍のメンバー8人のうち5人は東京、大阪、京都で殺害されていました。

一方平次も世話になったたこ焼き屋の店主が殺害された源氏蛍の一員であったため、その犯人捜しのために京都を訪れ五条大橋でコナンと出会い、協力して仏像を捜すことにします。

平次が京都を訪れた理由はもう1つあり、それは8年前に京都で見かけた手毬唄の少女を捜すことでこの少女は平次の初恋の子です。

離れた場所から1度見ただけの相手で直接会って話そうとした時には姿はなく、少女の場所には水晶玉が落ちているだけ。平次はこの水晶玉を拾い京都に行くときは持ち出すようにしていました。

平次は京都で千佳鈴という舞妓の女性と出会い、その時の少女と同じ歌を歌う千佳鈴を見て自分の初恋の相手はこの人だろうと考えますが、昔自分が聞いた歌とは歌詞に違いがありそのことが引っ掛かっています。

コナン達が利用していたお茶屋桜屋」で桜正造という人物が殺害された後、平次と和葉がバイクに乗っていると翁の能面をかぶった人物に弓で射られます。

その人物はバイクから降りると平次に木刀を投げつけて勝負を挑み、平次はそれを受けるのですが、籠手を使った戦い方に苦戦。和葉の機転で犯人は逃げますが平次は負傷し、桜正造は源氏蛍の一員であることが判明しました。

手紙が京都の地図であることを突き止めたコナンと平次ですが、桜正造を殺害した犯人に和葉が攫われたことを知ります。助けに行こうとしますが平次は病院を抜け出した無理がたたり倒れてしまいました。

地図に示された玉龍寺には阿笠の薬で一時的に新一の姿に戻ったコナンが、平次の変装をして現れ源氏蛍のメンバーを殺害した犯人が桜屋で同席した西条大河だと指摘します。

犯人であることがばれた西条は「俺は元々弁慶より義経が好きやった! 義経になりたかったんや!」と叫びますが、義経になることが動機かとなると少し違います。

西条は『義経流』という流派の存在を知り、独学の後に義経流の後継者を名乗るようになりました。源氏蛍に加わったのも義経流の道場を作るための資金集めのためです。

義経流の後継者を名乗ることからも分かるように、西条は義経という存在に執着がありました。

源氏蛍のメンバーは全員義経とその部下の名前が当てられていましたが、西条は弁慶の名を与えられたことに不満があり、それが「義経になりたかったんや!」という言葉に現れています。

玉龍寺は源氏蛍の頭が住職を務めていた縁で義経流の道場として使っていましたが、亡くなった後は廃寺が決まり、秘仏を売った金を独り占めすることが犯行の動機でした。

倒れて病院に運ばれた平次はまた病院を抜け出し玉龍寺で西条と対峙します。2人の戦いは平次の勝ちで決着がつき、秘仏玉龍寺の中にあることが分かりました。

平次の持っていた水晶玉も仏像にはめる白毫というもので、盗まれた秘仏にはめ込むものです。西条が能面をかぶって平次を襲ったのも白毫を狙っていたからですが、最終的に秘仏は山王寺に戻ります。

手毬唄の少女

誰なのか分からないままだった少女の正体ですが、手毬唄を間違えておぼえていた和葉であることがラストで判明。

平次は手毬唄の少女を年上だと思っていましたが、それは着物を着て化粧をしていたからそう見えたというオチでした。和葉はその時の自分を見せたかったと軽く言いますが、実は平次はちゃんと見ていました。

目を覚ました蘭は新一と会ったことを夢の中の出来事だと思っていましたが、帰りの電車に乗る前にハンカチについた新一の変装の跡に気づき、新一の存在が夢ではないことを確信できました。

この場面はコナンがわざと炭酸飲料の缶を振り、自分にかかるようにしたことで蘭がハンカチに気づきます。コナンとしては新一との出会いが夢ではないことを知らせたかったことが分かる場面ですね。

蝶柄は着物でと長寿や恋愛成就の意味があるので、この場面の少し前にある平次と和葉の会話や新一と蘭の関係を意識した演出です。

またゲストキャラクターの中で特に出番があったのは綾小路文麿と千賀鈴の2人です。綾小路は京都府警の警部でキャリア組としては白鳥の同期で、平次が事件に首を突っ込むことに否定的でした。

千賀鈴は指をケガしていたためコナンと平次に容疑者の1人として疑われ、初恋の少女であると平次が勘違いしたように2つのミスリードを引き起こします。

この2人は小五郎の推理ショーで共犯者だと言われ、それは間違いでしたが容疑者を絞るきっかけにもなりました。

阿笠の発明

少年探偵団にクイズを出し、それに正解したご褒美として京都に旅行を訪れた阿笠達はコナンと平次に出くわします。

阿笠は灰原の協力で作った腹の音が鳴るのを防ぐ薬を飲み、お酒が飲めない人向けに顔が赤くなる薬や、仕事を休みたい人向けに風邪と同じ症状が起きる薬を作っことをコナンに自慢しました。

これらは本作限定の薬でコナンには「どれも使えねえ」と呆れられますが、ある意味『キック力増強シューズ』以上のすごい発明で終盤に役立つ場面があります。こういう薬が出てくるのも劇場版ならではですね。

風邪とパイカルで短時間ならもどることができるかもしれないと助言したのは灰原ですが、薬を阿笠と灰原で作ったのですから出番が少なくても重要な立場にいました。

映画のラストで蘭と平次は合いたかった人間に出会えたことを喜びます。

本作は実質平次が主役で終盤のアクションシーンでも平次が主役のように立ち回り、他のキャラクターは平次をサポートをする役回りでした。

ですが蘭がすぐに会える平次と和葉を羨ましがり、コナンが蘭との思い出を話すようにコナン(新一)と蘭の描写も惰性にならないレベルで重ねられています。

それが一時的に新一の姿で蘭と再会する場面の盛り上がりに繋がり、一瞬で新一自身の手で終わってしまう切なさにも繋がりました。

最近の映画に比べ派手なアクションはなく爆発も起きません。周囲への被害も寺で小火が起きる程度です。

重火器も出てこないので他のシリーズに比べて平和ともいえますが、並行して進む犯人と初恋の人捜し、新一と蘭、平次と和葉に丁寧にスポットを当てつつ、新一の姿で平次に変装しあの黒タイツ姿にもなる変則的な構成。

上記以外にも蘭が最後に「待つのは嫌いじゃない」と言うまでの心情の変化など見どころの多い映画です。